IT企業でプロジェクトマネージャーをしている、久保田陽介です。
34歳、社会人12年目。
前職では営業をやっていました。
最初の2年くらいは覚えることだらけで、毎日が新鮮だったんです。
飛び込み営業で門前払いされても、次はどう切り出そうかと帰りの電車で考えるのが楽しかった。
でも3年目に入ったあたりから、同じルーティンの繰り返しに感じるようになりました。
朝起きて、同じ電車に乗って、同じ顧客リストを回って、同じフォーマットで報告書を書く。
日曜の夜になると「あぁ、また明日から1週間か」と気持ちがどんよりしていました。
当時は「営業が向いてないのかな」と本気で悩んでいたんですが、今思えば別の問題でした。
仕事の内容じゃなくて、仕事との向き合い方の問題だったんです。
転職してPMになったことでリセットはできたものの、正直、また同じことが起きるんじゃないかという不安はありました。
そこで意識的に始めたのが、仕事に「仕掛け」を入れることです。
大げさなことじゃなくて、日々の業務にちょっとした工夫やゲーム的なルールを加えるだけ。
学生時代からRPGが好きだったので、その感覚を仕事に持ち込んでみた、という感じです。
これを2年ほど続けてみて、月曜の朝の気分がはっきり変わりました。
今日はその話を書いてみます。
「仕事がつまらない」のは、能力の問題じゃなかった
仕事がつまらないと感じると、つい「自分には向いてないのかも」と考えがちです。
でも僕の場合、原因は「慣れ」でした。
人間は同じ作業を繰り返すと、どうしても新鮮味がなくなります。
最初は必死に覚えていた仕事も、一通りこなせるようになると「作業」に変わる。
スキルは確かに上がっているのに、やっていることの難易度が変わらないから退屈になる。
前職の営業がまさにそうでした。
転職先でも、同じ悩みを抱えている先輩がいました。
入社5年目のエンジニアの方で、「最近、コードを書いてても何も感じない」とランチで話していたのが印象に残っています。
業界や職種が違っても、慣れによるマンネリはどこでも起きるんだなと。
こういう状態を研究している分野があります。
「ジョブ・クラフティング」と呼ばれる考え方で、イェール大学とミシガン大学の研究者が提唱しました。
仕事そのものを変えなくても、やり方や捉え方を自分なりに工夫することで、やりがいを取り戻せるという理論です。
日本の人事部の解説記事によると、「作業」「人間関係」「認知」の3つの方向から仕事をカスタマイズする手法で、国内の企業でも導入が広がっているそうです。
具体的に言うと、仕事のやり方そのものをアレンジしたり、関わる人との接し方を変えてみたり、仕事の意味づけや捉え方を見直したり。
こういったアプローチで、同じ仕事でもやりがいの感じ方が変わるという話です。
僕は当時この言葉を知らなかったんですが、振り返ると無意識に近いことをやっていました。
仕事の中身は変えられなくても、取り組み方は自分で変えられる。
転職してすぐのタイミングで、そう気づけたのが大きかったです。
僕がやっている5つの「仕掛け」
具体的にどんなことをやっているか紹介します。
どれも道具は要らないし、誰かの許可も要りません。
明日からすぐ試せるものばかりなので、気になるものがあれば1つだけでも試してみてください。
朝イチで「今日のクエスト」を1つ決める
毎朝、PCを開いたらまず「今日のクエスト」を1つだけ決めます。
通常のタスク管理とは別の話で、「今日はこれをクリアしたら勝ち」という個人的なお題です。
たとえば「15時までに企画書の骨子を完成させる」とか「初めて話す部署の人にチャットで1回質問してみる」とか。
達成したかどうかが曖昧にならないくらい、具体的に決めるのがコツです。
RPGのクエストだって「何となく強くなる」じゃなくて「○○を倒す」ですよね。
これをやると、ぼんやり始まりがちな1日に焦点ができます。
クリアできた日は、帰り道の気分が少しだけいい。
逆にクリアできなかった日も「明日リベンジしよう」という気持ちになるので、どっちに転んでも悪くないです。
ちなみに最初のうちは「会議で1回は自分から発言する」みたいなハードルの低いクエストから始めました。
いきなり難しいお題を設定すると挫折するので、最初はとにかく「クリアできた」という感覚を味わうのが大事です。
タスクに制限時間をつけてタイムアタックする
普段のタスクに自分で制限時間を設けるだけです。
やっていることは本当にシンプルなんですが、仕事に対する集中の質が変わります。
たとえば「この議事録、30分で仕上げる」と決める。
30分を超えたところでペナルティはないんですが、時間を意識するだけで集中力が変わります。
ゲームのタイムアタックと同じで、制限があると人間は自然と無駄を省こうとします。
僕が初めてこれをやったとき、いつも45分かけていた議事録が28分で終わりました。
無意識にだらだらやっていた部分があったんだなと。
ただし注意点もあって、品質を犠牲にしてまで急ぐ必要はありません。
あくまで「自分との遊び」なので、間に合わなくても何も問題ない。
時間を意識する習慣がつくこと自体に価値がある、という感覚でやっています。
苦手な仕事に自分ルールをつける
誰にでも「やりたくないタスク」はあると思います。
僕の場合は経費精算と、社内向けの定例報告資料の作成です。
こういうタスクに、自分だけのルールをつけるようにしています。
「経費精算は立ったままやって5分以内に終わらせる」とか「報告資料は前回よりスライドを1枚減らす」とか。
ゲームで言えば「縛りプレイ」に近い発想です。
嫌な仕事でも、ルールがあると不思議と取り組む気になります。
ゲーマーの方には伝わると思うんですが、制限があったほうが燃えるんですよね。
実際、「報告資料のスライド削減チャレンジ」は思いがけず仕事の質も上がりました。
余計なスライドを削ることで、本当に伝えたいポイントが絞られるんです。
上司からも「最近の報告、前より分かりやすいね」と言われたことがあって、あれは嬉しかった。
週1回、やり方を変えてみる
毎週1回、何か1つの仕事のやり方を意図的に変えてみます。
会議のファシリテーションを普段と違う順番でやるとか、資料を箇条書きじゃなくて図ベースで作ってみるとか。
大きな変更じゃなくていいんです。
むしろ小さい変化のほうが試しやすいし、失敗してもダメージが少ない。
小さな変化でも「いつもと違う」というだけで、脳が少し起きる感覚があります。
うまくいかないことも多いです。
一度、会議の冒頭にアイスブレイクを入れてみたら、参加者が戸惑って逆に空気が固くなったこともありました。
でも「今回は微妙だったな」という感想自体が新しい体験なので、マンネリの解消にはなっています。
失敗も含めて「いつもと違う1日」になるのが、この仕掛けのいいところです。
「経験値ログ」を毎日3行書く
1日の終わりに、今日学んだこと・気づいたことを3行だけメモします。
RPGの経験値が入る瞬間の表示をイメージしたもので、ノートアプリに箇条書きで書いています。
- ○○さんとの打ち合わせで、要件の優先度の伝え方にヒントをもらった
- タスクの見積もりが甘かった、次回はバッファを入れる
- 新しいツールのショートカットを覚えた
こんな感じ。
書くのに5分もかかりません。
地味なんですけど、1か月分たまると「自分、思ったより成長してるな」と実感できます。
半年前のログを読み返すと、当時は苦戦していたことが今は普通にできるようになっていたりして。
RPGで言えば、「いつの間にかレベル上がってたんだ」という感覚です。
逆に3行すら書けない日が続くと「ちょっとマンネリに入ってるかも」と気づくセンサーにもなります。
そういうときは、他の仕掛けを意識的に増やすようにしています。
なぜ「仕掛け」は効くのか
個人の体験だけだと「たまたまでしょ」と思われそうなので、少し調べたことも書いておきます。
感覚的に「なんかいい」と思っていたことに、ちゃんと裏付けがあると分かったのは、自分としても心強かったです。
仕事にゲーム的な要素を取り入れる手法は「ゲーミフィケーション」と呼ばれていて、学術的な研究もされています。
早稲田大学と東京学芸大学の研究チームが日本教育工学会論文誌で発表した研究によると、ゲーミフィケーション研修を受けた従業員は仕事中のポジティブな感情を肯定的に捉えるようになり、自律的な行動が促進される傾向が確認されたそうです。
心理学の「自己決定理論」とも関係があります。
心理学者のデシとライアンが提唱した理論で、人間には「自分で決めたい」「自分はできると感じたい」「誰かとつながりたい」という3つの基本的な欲求があるとされています。
仕掛けを自分で設計するという行為は、この中の「自分で決めたい」という欲求を満たすんですね。
「やらされ仕事」から「自分で選んだ仕事」に感覚が切り替わる。
僕は研究者じゃないので厳密なことは言えませんが、体感としてはかなり腹落ちします。
厚生労働省も「ワーク・エンゲージメント」という概念を打ち出しています。
働き方・休み方改善ポータルサイトによると、「仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得ている状態」のこと。
活力・熱意・没頭の3つの要素で構成されていて、これが高い人ほど仕事のパフォーマンスも定着率も高い傾向があるそうです。
僕がやっている仕掛けは、このワーク・エンゲージメントを自力で高める方法の1つなんだろうなと、後から腑に落ちました。
理屈を知ったから仕掛けを始めたわけじゃなくて、先にやってみて「なんかいいな」と感じた後に理屈が追いついてきた。
そういう順番のほうが、たぶん続きやすいんだと思います。
仕掛けを続けるコツ
2年続けてみて、うまくいったことも失敗もありました。
その中で分かったことを書きます。
まず、全部やろうとしないこと。
僕も最初は張り切って毎日いくつも仕掛けを入れようとして、逆に疲れました。
1日1つ、気が向いたときだけで十分です。
やらない日があっても全然いい。
仕掛けそのものがストレスになったら本末転倒なので。
それと、効果を期待しすぎないこと。
仕掛けを入れたからといって、仕事が劇的に楽しくなるわけではありません。
でも「今日も同じ1日だったな」で終わる日が減ります。
その小さな変化の積み重ねが、月曜の朝の気持ちを変えてくれました。
あと、周りに宣言する必要はないです。
僕は最初、チームメンバーにも「タイムアタックやってみない?」と声をかけたんですが、反応は微妙でした。
仕掛けは自分のためにやるもので、人に広めようとすると変なプレッシャーになります。
こっそり1人で楽しむくらいがちょうどいい。
仕掛けのバリエーションをもっと広げたい方には、最近読んだ本が参考になりました。
田中耕比古さんという戦略コンサルタントの方が書いた本です。
20年以上のコンサル経験をもとに、仕事をRPGに見立てて50個のギミック(仕掛け)を体系的に紹介しています。
「仕事の意味を書き換える」「仕事を高速化する」「人を巻き込む」といった章立てになっていて、自分の状況に合った仕掛けを選べるのがいい。
僕みたいに自己流で試行錯誤するのもアリですが、プロが整理してくれた50個のアイデアに触れると、「こういう発想もあったか」と視野が広がります。
詳しくは仕事を面白くするギミック50の紹介ページをご覧ください。
まとめ
仕事がつまらないと感じるのは、能力や適性の問題じゃなくて、「慣れ」が原因であることが多いです。
転職や異動で環境を変えるのも一つの手ですが、それだけが選択肢じゃない。
今いる場所で、日々の業務にちょっとした仕掛けを入れるだけで、仕事の見え方は変わります。
僕は「クエスト設定」「タイムアタック」「自分ルール」「やり方チェンジ」「経験値ログ」の5つを気分で使い分けています。
全部やる必要はないし、合わなければやめていい。
自分に合う仕掛けが1つでも見つかれば、それだけで十分です。
月曜の朝、「今週はどんな仕掛けを入れようか」と考えるようになったら、もう大丈夫です。
少なくとも僕にとっては、仕掛けを入れ始めてからの2年間で一番変わったのは、スキルや実績よりも「仕事に対する気持ち」でした。
同じ仕事をしていても、捉え方次第で面白さは変わる。
それを教えてくれたのは、転職でもスキルアップでもなく、毎日のちょっとした仕掛けです。
