製造業向けの技術ライターをしている宮坂です。
以前は車載用電子部品メーカーの生産技術課で、エポキシやウレタンの封止工程を17年担当していました。
若いころ、使い捨てのスタティックミキサーを「まだ流れているから」と長く使い回したことがあります。
結果は硬化不良のロットが出て、選別と作り直しに丸二日。
ミキサー代を浮かせたつもりが、何十倍もの損になりました。
ミキサーの中で起きていること
スタティックミキサーは、管の中にねじれた板(エレメント)を並べた部品です。
ノリタケの解説ページ「スタティックミキサーとは?」によると、液はエレメントを1枚通るたびに2つに分かれ、分割数はエレメント数をnとして2ⁿになります。
高粘度の液は、主にこの分割と、管の中心と壁際の液を入れ替える作用で混ざるそうです。
逆に言えば、エレメントのすき間に硬化物がこびりつくと、この分割がきちんと働かなくなります。
主剤と硬化剤は混ざった瞬間から反応が進むので、ラインが止まっている間もミキサーの中では硬化が進んでいます。
交換を延ばすと出てくる損
厄介なのは、混ざりの悪さが見た目では分かりにくいことです。
兵神装備の技術コラム「2液混合装置」でも、2液性は本当に混ざっているかが非常にわかりにくく、主剤と硬化剤の色が似ている場合もあると書かれています。
私が現場で見てきた症状を並べるとこうなります。
| ミキサーの状態 | 現場で起きること |
|---|---|
| エレメントに薄く硬化物が付く | 混ざりが甘くなり、一部が硬化不良になる |
| 流路が細くなる | 吐出の圧が上がり、塗布量がばらつく |
| 完全に詰まる | ラインが止まり、復旧まで生産できない |
一番怖いのは一つ目です。
硬化不良は後工程や出荷後に見つかることが多く、気づいたときには対象ロットが膨らんでいます。
交換の目安はこう決める
私が工程を組むときは、次の場面でミキサーを替えるルールにしていました。
- 材料メーカーが示す可使時間を超えて吐出を止めたとき
- 樹脂や品番を切り替えるとき
- 吐出の圧がいつもより上がってきたとき
- 始業時と昼休み明け
可使時間は室温が高いほど短くなる傾向があるので、夏場は停止時間の上限を短めに設定していました。
新しいミキサーに替えた直後も、最初の数ショットは捨て打ちしてから製品に塗るようにしていました。
装置側で手を打つ方法もあります。
エース技研のグルーミックス200には、ミキサー内部での硬化を防ぐリピートタイマーが標準で付いています。
一定間隔で少量を吐出させ、中の液を入れ替えておく考え方です。
ミキサーの種類は、計量の方式や混合比とセットで選ぶものです。
装置の選定から考えるなら、ナカリキッドコントロールの2液を塗布するディスペンサーのラインナップが参考になります。
同社は使い捨てのスタティックミキサも周辺機器として扱っていて、テストルームで実機による試験も申し込めます。
実液を流して、何ショットで混ざりが安定するかを確かめておくと交換ルールも決めやすくなります。
まとめ
スタティックミキサーは1本あたりの値段が安いぶん、つい使い回したくなる部品です。
ただ、交換を1回飛ばして出た不良の手直しには、ミキサーを何十本も買えるほどの手間とお金がかかります。
可使時間と停止時間を基準にして、交換のタイミングを作業手順に書いておく。
地味ですが、これだけで封止や接着の不良はかなり減らせます。
