パワハラという概念が浸透した理由と今後の課題

ハラスメント関連

2010年ごろからパワハラが本格的に問題視されるようになってきました。
これによって上司と部下のパワーバランスに大きな変化が現れるようになったのです。
それまで部下に厳しく指導することは当たり前であり、間違った行為として咎められることは多くありませんでした。
部下が取り得る行動として、黙って言うことを聞くこと以外には退職しかないのが実情です。

上司はあくまでも役職が上に位置するだけ

上司は決して聖人君主ではなく、コンプライアンスを気にもしない非常識人も珍しくありません。
あくまでも役職が上に位置するだけであり、人間性において優れているわけではないことに注意が必要です。
それにもかかわらず、まるですべてで勝っているように勘違いして、偉そうに説教してくる上司がたくさんいます。
特に年功序列によって出世しただけの場合、そのような人物に暴言を吐かれることを看過できない若者も多いでしょう。
そのような背景があり、人権を重視する動きの強まりと呼応するかのように、パワハラに対して世間の目は厳しくなりました。

若者の過労死が社会問題になった

それでも、まだ最初のうちは、若者の甘えに過ぎないという指摘が多かったことも事実です。
本格的に変化が加速し始めたのは、若者の過労死が社会問題になったからでしょう。
長時間労働をしたくないと思っていても、上司からの圧力が強ければ従わざるを得ません。
文句を言っても甘えと捉えられ、「自分たちが若い頃は平気で行っていた」などと突き放されてしまいます。
それに対抗して、意見が受け入られるようにするには、社会全体が変わる必要があったのです。
長い年月がかかりましたが、今ではパワハラは上司の去就に大きな影響を与えます。
それが原因で退職することになるケースもあるなど、企業の判断は決して緩くはありません。

SNSの影響力は大きい

その理由の一つとなっているのはSNSの影響力です。
これまでパワハラが横行していても、企業内で隠蔽されることが当然でした。
しかし、今ではSNSを使って誰でも世界に情報を発信できる時代です。
会社に特定される覚悟さえあれば、自分が受けた非道を世間に公表するのは容易です。
そして、特定されたとしても簡単にクビになることはないでしょう。
そのような処分を下すと、またSNSで告発されてしまい、企業の評判は地に落ちてしまいます。
就職希望者が減るだけでなく、商品の不買運動や株価の暴落につながる恐れもあります。
それよりもパワハラを行っていた人物を厳しく処罰することで、クリーンなイメージを作ったほうが得策です。

まとめ

このように、企業にとって非常にデリケートな問題であり、その対応によって命運が分かれることを理解しなければなりません。
一方、冤罪ともいえる告発が増えていることも問題であり、上司の言い分をしっかり聞くシステムを設けることも欠かせません。
部下の言うことを無条件に受け入れていると、企業活動に支障が出ることも事実だからです。
したがって、両者の主張を公正に判断できる部門や人材の用意が急務となっています。